2011年 05月 28日
唐辛子
もう20年以上前のことである。私はとある会社の新人社員として、とある営業部に配属された。最初のうちは先輩社員にくっついて仕事のノウハウみたいなものを教えてもらっていたのだが、数週間も経過すると一人で歩く様になる。その頃のことだ。ある訪問先が葛飾区の柴又にあった。あの「寅さん」の柴又である。東京生まれの東京育ちの私ではあっても、下町方向にはほとんど行ったことも無いし、駅を降りて「へぇ、ここが柴又かぁ」と半ば観光気分で帝釈天の中を歩いて訪問先に向かったのをハッキリと覚えている。時代が今だったら、ケイタイで写真でも撮りながら歩いていたことだろう。その道すがら、境内で唐辛子を売っているテキ屋さんを見つけた。唐辛子をこうした露店で売っているのを初めて見たし、当時から割と香辛料は好きだったので、「帰り際に買って帰ろう♪」と決めて訪問先へ急いだ。

訪問先は帝釈天を抜けてしばらく行ったところにあった。下町の、さほど大きくない会社だった。そこの社長さんはとても気さくな方で、とんとん拍子に商談は進み、珍しく(?)うまくまとまってしまった。深々とお辞儀をして「さぁ、帰ろう」と思ったら、ちょうど昼どきであったからなのか、その社長さんは私を昼食に誘ってくれた。社長さんの運転するクルマに乗って、ちょっと離れた場所にあった蕎麦屋さんに行き、その後やはり駅まで送ってくれたのだった。そんなこともあって、楽しみにしていた「唐辛子購入」は次回のお楽しみと言うことになってしまった。残念ではあったのだが、新たな取引もこの柴又で始まることだし、またこの場に来るチャンスもあるだろうとあまり気にしなかった。
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ところがその後の時は流れ、業績を上げたこの会社が移転したりした事もあったり、いや、そういう事よりも「唐辛子を売っているテキ屋さん」自体に何故だか巡り合わないままに20数年が経過してしまった。「ラー油」だとか、そういう「別に大したもんじゃないだろ」ってものに妙な拘りを持つ傾向のある私である。祭りなどに出向いた際にはしっかりと探してはみるのだが、どうしても発見に至らなかった。

しかし、ついに見つけた。先日の「24本骨組みカサ」の巣鴨で、とうとう見つけたのだ。今度と言う今度は見過ごす訳にはいかない。後回しにもできない。大目的のカサを買う前だろうが何だろうが、その場で手に入れた。そこらで売ってる大量生産の「七味唐辛子」とは色も違うし、第一に香りが断然違う。蕎麦などに振りかける、単なる香辛料としてだけの唐辛子ではない。ある意味、芳香剤の要素さえ兼ね備えている様な、「手作り・手調合の巣鴨モノですゼ、ダンナ」と隣のおじいちゃんに小声で言ってみたくなる(?)シロモノである。ビニール袋から出すのさえ惜しい、そんな唐辛子である。いや、しかしここまで20数年もかかるとは思わなかったなぁ。
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by kotodaddy | 2011-05-28 09:51 | その他


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